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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)




「ぶええ、岩ちゃああん」

「んじゃ再会を祝して乾杯!」
「あんま飲みすぎんなよお前ら」
「んな固いこと言うなって」

「本当にごめんねええ……!」



 その後、しつこく謝りつづけた甲斐もあって──「うるっせえクソ川!」──岩ちゃん渾身の回し蹴りを食らった俺。

 本日二回目のお星さまを見て、ついでに鼻血を出して、それも両鼻から。

 鼻にティッシュを詰めていた。
 ひとり寂しく、ボックス席に腰掛けて、小さく丸めた紙で止血をしていた。

 そしたらね。




「もう謝んなくていい、許す」




 カウンター席の方からぶっきらぼうな声だけが飛んできて、俺を許してくれたんだ。

 じわり。
 心臓のあたりに不思議な熱。

 ほろろ、ほろろ。

 溢れる涙があったかい。
 温かくて、暖かいんだ。

 凍ってた心が溶けていく。


「え!? あの黒尾が!?」

「おー、マル暴の課長だってよ」

「はあ、立派になったもんだ」


 永久凍土を溶かしてくれた炎。
 談笑のなかにいる彼は、赤。
 
 何よりも尊い絆の証。

 ありがとう、岩ちゃん。
 これからもよろしくね。

 喜びも憂いも希望も絶望も、ぜんぶが詰まった町。俺たちが出会って、別れ、そしてこれからも生きていくこの町の片隅で。

 俺は、誓う。

 もう二度と傷つけない。彼のことだけじゃなくて、誰のことも。奪って傷つけるんじゃなくて、守って愛せるひとに。

 そんな人間に、なることを。

 深く、深く。
 この胸に誓った。

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