第3章 はみだし者のバラッド (R18:田中龍之介)
「……ねえ、何してるの?」
目を覚ました彼女。
すこし掠れたその声を聞いて、俺は顔をあげた。手には小さな上履き。俺の両手は真っ黒に汚れている。
俺をみる彼女の視線が、顔、首元、胸部と下りていって、最後に、手元のそれへと辿りついた。
「え、……それって」
「カラスの色」
「…………え?」
「お前、知ってるか? 黒はすげえんだぞ。他のどの色と混ぜても、絶対に負けないんだ。それが俺たちの色! カラスの色!」
な?
そう付け加えて上履きを差しだすと、彼女は、貯水タンクの上から降ってきた彼女は、天使みたいな顔をして笑ったんだ。
「……ありがとう」
そう、恥ずかしそうに微笑んで。