第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)
やいのやいのと野次を並べる二人にアッカンベーをして、ティッシュで鼻水を拭いてから、伝票をぺたり。
両腕で抱えるのがやっとな大きさのダンボールに、しっかりと貼りつける。
中身はお豆腐とおからクッキーだ。
常連のお客さんが教えてくれた美味しいやつ。
こんなの迷惑だって分かってるんだけど、どうしても何かしたくて。どうせ送るなら、少しでも喜んでほしくて。
『繋心くん、俺いつもので』
『あいよー、任せときなー』
早朝の坂ノ下食堂で揚げだし豆腐ばっか食べてた横顔を思い出して、ちょっと胸が苦しくなる。
「……元気にしてるかな、岩ちゃん」
「んなに気になるなら会いに行けよ」
「んでちゃんと謝ってこいや」
「無理だよ、……まだそんな勇気ない」
「豆腐送る図々しさはあるのに?」
「住所調べるほど執着してんのに?」
「二人のそれは心配なの? 何なの?」
何年経ってもコンビネーションばっちりで俺を弄くるマッキーと松っつん。そんな二人を一瞥。
どうせ朝まで帰らないのであろう彼らに背を向けて、俺はひとり、店外へ出ようとした。
コンビニに行こうと思ったのだ。
荷物発送の手続きを、するために。
しかし、──それは叶わなかった。