第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)
「……諸刃の剣、ですね」
「ああ、そうだ。お前が出所できることはほぼ間違いない。だが、ここから出たあと、そっからが本当の勝負だ」
「下手したら、……全員消される」
「ハイリスクハイリターンなんざ慣れっこ、だろ? お前らがもっかい幸せになるにはこれしか方法がねえ」
幸せに、か。
どくん
どくん
凪いでいたはずの海が、今度は大きくうねりだす。胸に湧きあがる熱は、なんだろう。
優しさでも、愛しさでもない。
温かいのとも暖かいのとも違う。
「絶対お前らを救ってやる、だから」
固い決意を孕んだ声音。
決して屈さない彼は、黒。
揺るがない強さの証。
「今度こそ、カオリを幸せにしてやれ」
熱い。
心が、燃えるように。
俺が幸せにするのか。
カオリを、俺が、この手で。
ああ、そうか。
この熱。
この、気持ち。
「──……幸せにします、絶対に」
胸を焦がす、勇気だ。
【brave it out】fin.
戦え、最後の一瞬まで──