第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)
「で、だ、ここからが本題な」
彼がすらすらと並べていく言葉に相槌を打ち、その途中で、鷲匠鍛治に逮捕状が出ていることと、白鳥沢組の実質的な解体を知った。
ひとまず安堵して、直後に懸念する。
きっと今頃、奴らは怒りを爆発させているはずだ。
黒尾さんの提案する「牛島んとこの鉄砲玉に全ての罪を被ってもらう」という話は確かに名案だし、裏社会でのしあがることに憧れている五色工あたりなら、喜んで身を差しだすだろう。
組長や幹部の身代わりになって、若い衆が罪を被る。
数年、数十年、懲役に耐えて出所した暁にはそれなりの地位と待遇が用意されているのだ。
この世界ではよくある話。
だけど──
組の解体が余儀なくされた今、奴らにとって俺は本当の意味での【仇】となった。
憎むべき仇を娑婆に炙り出せるのであれば、奴らは、鉄砲玉のひとりやふたり簡単にブチ込む。
そして、血眼になって探すだろう。
爪を研いで窺っていることだろう。
俺を、カオリを。
俺たちに報復する瞬間を。
今か、今かと息を潜めて、待ち侘びているのだ。