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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)





「……っカオリ、……、っ」



 ほろ、ほろ、ほろ。

 頬を降りていく熱。
 枯れるほど泣いた筈なのに。

 涙が零れて、止まらない。

 下を向いて、腿に置いていた拳を握りしめて。強く噛みしめた唇が痛い。ツンと苦しくなる目元が痛い。

 ずっと自分を押し殺してた。本音なんか言っちゃいけないと思ってた。

 心が、痛くて痛くて堪らない。


「黒尾さん、俺、……会いたいです。あいつに、……カオリに、会いたい。会って抱きしめてやりたいです。謝りたいです。今でもお前が好きだって、……愛してるって、そう、言……、……っ」


 最後の方はもう、ほとんど声にならなかった。咽ぶ音だけが漏れていた。

 ぱた、ぱた、ぱた。
 受刑者用のズボンに水玉の滲み。

 心なしか鼻声になった黒尾さんが「クールビューティが台無しだな」と野次を飛ばしてくる。


「……それも、余計なお世話スね」

「うっせ、生意気だぞクソガキ」


 腫れぼったくなった瞼を押しあげて彼を見る。視線がぶつかる。

 ニッと笑んだ黒尾さんに釣られて口端を持ちあげると、頬が少し痛かった。

 笑顔なんて、本当に久々だったから。

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