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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)



 黒尾さんは言う。

 あの町で見たときと同じ、横柄な態度で、足を組んで、椅子に深く腰掛けて。


「本当はさ、勝手に守ったつもりになってんじゃねえ、って叱るつもりだった。あいつのこと、ドン底まで悲しませたお前が許せなかった。でもよ、さっきのお前見たら、そんな考えフッ飛んだわ」


 俺は、まだ?マークを浮かべたまま。

 彼の真意が分からない。


「お前があいつをどんだけ大切に想ってんのかよーく分かった。すげえ伝わってきた。だから尚更強く思う。俺は、お前をこっから出す、絶対」

「……黒尾さん、」

「んで会わせてやるよ、カオリに」


 カオリ──


 君の名前が部屋に響いた。

 このどうしようもなく冷たい、鉛色の世界に。憂いと後悔しか存在しない絶望の日々に。

 じわり
 今一度の色が灯っていくような。

 不思議な、気持ち。

 温かい。
 暖かい。




「…………カオリ」




 ぽつん、と呟いてみる。

 いつしか思い出すことも止めていた。
 彼女の、君の、──……お前の。

 何よりも愛しいその名前を。

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