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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)




「お前がなんて言おうが関係ねえ」

 やめろ、やめてくれ。
 そう願うのに彼の言葉は続く。

「俺は、赤葦、お前をここから出す。ようやく条件が整ったんだ。いくら断られても俺はやるからな」



 ああ、どうして。

 頭痛すら覚えた。胃が軋んだ。喉の奥が苦しくなって、動悸がする。何を、今更。頼むから俺の決意を揺るがせないでくれよ。


「……俺はもう、決めたんです」


 そう、俺は決めたんだ。

 もう二度と外の世界には戻らない。

 戻れないんだ。
 だってそうだろ。

 組の資金繰りのために売買していた違法ドラッグ。俺の手中から放たれたブツが、あの町を、そして彼女を、蝕んで傷付けたのだから。


 彼女の笑顔を守りたい。


 その一心で罪を償うことを決め、組もろとも沈むつもりでこうして自首したというのに。

 仮に、ここから出られたとして。
 今更どの面下げて生きていけというのか。一体どこへ帰れというのか。

 大体、俺が生きているという事実そのものが彼女にとって脅威なのだ。


 愛した女のために、俺は組を売った。


 隠しようのない事実だ。
 勿論、組の連中も知るところだろう。

 そんな俺が無事出所したとなったらまず最初に狙われるのが、彼女。

 俺は自分自身が傷付けられることよりも、いや、死ぬことよりも辛く凄惨な報復を受ける。


 それは、最愛を奪われること。


 端的にいえば彼女は殺される。
 常人では考えつくことすら出来ないような苦痛と恐怖に晒されて、人知れず、跡形もなくこの世から消されてしまう。

 それが【白鳥沢組】のやり方だ。

 だから、俺はここを出る訳にはいかない。一生をこの獄中で終えると、そう誓ったんだ。

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