第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)
何度、涙を落としただろう。
幾度、絶望に打ちひしがれただろう。
何百という夜を越えたって、幾千という朝を迎えたって、これっぽっちも色褪せやしない。忘れられる訳がない。
君と過ごした時間はどれも鮮やかに、瞳を閉じれば、──ほら。
怖いくらいに、覚えてる。
俺を見つめる君の瞳。
慈愛に満ちた優しさの眼差し。
俺を呼ぶ君の声。
耳から離れてくれないんだ。
恋しい、って、思う。
君が恋しい。恋しいよ。
恋しくて、悲しい。
知らないことがたくさんあった。
君とじゃなきゃ見れない景色が、たくさんあるはずだった。
なのに、君はもういない。
知りたいことがたくさんあった。
君の見てきた世界を、君を育んでくれた世界を、この目で見てみたかった。
なのに、俺は手離すことしかできなかった。そうすることでしか、君を守れなかった。
だから、君がいない。
会えないんだ、……もう、二度と。