第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)
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【prologue】
絶望の中にいた。
信じられることなんて、ひとつもなかった。周囲にいる人間はすべて等しく、血縁関係にある親ですらも、信頼に値するには程遠かった。
ずっと独りで生きてきた。
それでいいと思ってた。
そう自分に言い聞かせていた。
寂しいとは、思わなかった。
あの日──
忘れもしない、冬の、とある夜。
俺は君に出会って、心を知った。
不思議な感覚だった。
それはまるで、じわりじわりと、渇いた土地に水が沁み渡っていくような。
モノトーンだった世界が、少しずつ少しずつ、色で溢れていくかのような。
初めての、温もりだった。
彼女が悲しそうな顔をする。
胸が引き裂かれたみたいに痛くなる。
彼女が恥じらいの笑みを湛える。
気が狂いそうなほど愛しいと思う。
彼女の静かな寝息、伏せた睫毛。
──手離したくなくて、苦しくて。