第19章 幻怪(R18:月島蛍)
──朝、瞼の裏に感じた陽光。
その燦々たる眩しさに不機嫌を覚えて、眉根に皺を寄せる。
かすかな物音が聞こえた。
シャワー、だろうか。
ほのかにシャンプーの香り。
気怠さを押しのけて身体を起こした私は、枕元に置かれた二つのスマートフォンを見て、嘆息する。
昨晩の夢幻が事実であるという安堵。
自分の犯した罪、背徳、罪悪感。
全てがない交ぜになった溜息だった。
おもむろに、自身のスマホを見やる。
着信アリを知らせるランプ。
交互に点滅する緑とオレンジ。
電話と、メール。
相手なんて分かりきってる。
一鉄、私の、夫からだ。
「……13件と、5通」
掛けすぎだし送りすぎよ、ばか。
メールの中身を読もうとは思わなかった。思えなかった。その勇気がなかった。
受信箱の左端にある正方形にチェックを入れて、ゴミ箱のアイコンをタップする。そのままメールアプリを閉じて画面をロックする。
喉が、渇いた。
理由をつけてスマホから、現実から、目を背けようとする。
ベッドから降りて、一歩。
備え付けの有料冷蔵庫へと向かうために足を踏み出したところで、着信。
聞きなれた振動音。
私のスマホだ。
大きく、大きく、嘆息して。
『──……っもしもし、絢香?』
その涙声を聞いた瞬間。
私は、全てを後悔した。