第3章 はみだし者のバラッド (R18:田中龍之介)
ど、どど、どうしよう。
これは由々しき事態だ。
寝ぼけているのだろうか。俺の胸板に擦りよって眠る彼女は、時折、心地いい場所を探すかのように身じろぎをする。硬直した俺の両脚を、彼女の太腿(しかも生足)がガッチリホールドする。
こすれあう、肌。
彼女が身を捩るたびに、俺がここから逃れようとするたびに、こすれる。衣擦れの音。存在を主張しはじめた下半身に感じる、彼女の温もり。
(もーーーだめだ……!!!)
限界だった。我慢の。
理性の糸はふつと切れたし、リトルマイサンは爆発寸前だし、彼女すげえ可愛いし。
チュー! チューだけなら!
何がどうしてキスだけなら許されるのかは分からないが、いまの俺には何某かの理由が必要だった。
彼女に、触れるための理由が。
いいじゃんいいじゃんちょっと休憩していくだけだから、絶対ヤらないから、先っぽだけだから、の原理である。
(た、田中龍之介、イッキまーす!)
そんな馬鹿みたいな掛声を小声で叫んで、いざ、彼女の唇にフェードインしようとした。したのだけれど──
ああ、なぜ。
またも叶わない俺の行為。
ふと目に留まってしまった彼女の足元。小さな小さな足を覆うその上履きには、びっしりと悪意のある落書きが施されていた。