第3章 はみだし者のバラッド (R18:田中龍之介)
あれは、俺がまだ小学生の頃。
夏のある日だった。
親にあれだけ「帽子を被らなきゃいけないよ」と注意されたのに、俺は言いつけを無視して虫捕りにでかけた。とても、とても暑い昼下がりだった。
だんだん重くなる足取り。
気付けば辺りの景色が歪むくらい目眩を起こしていて、俺はそのまま意識を失ったんだ。
通りすがりの婆ちゃんが助けてくれて、水も飲めないくらい衰弱してた俺の唇に、井戸水を含ませたハンカチを押し当ててくれたんだっけ。
あの日の体験が、まさかこんな形で役に立つとは。人生とは不思議な縁で繋がっているもんである。
「……っ、……ん」
「! おい、あんた、大丈夫か!?」
「…………ここどこ?」
ほああ、とデカい溜息。
とりあえず窮地は脱したようだ。よかった。本当によかった。
しかし安心したのも束の間。彼女は再び深い眠りのなかへと落ちていってしまう。
おいおい大丈夫か?
もしやまた意識を失ってしまったのでは、と彼女の顔を覗きこむ。穏やかな吐息。どうやら寝ているだけらしい。
「ったく心配かけやがって……」
ボソリと独りごちて、はだけてしまった布団を彼女に掛け直す。掛け直そうとしたのだが、しかしそれはまたも叶わなかった。
パフッ
「う、………ぱふ?」
塞がれる視界。香る花。
驚いて顔をあげれば、俺を抱き枕がわりにして眠る女子がそこにいた。WHY!?