第19章 幻怪(R18:月島蛍)
絢香──、今度は吐息混じりの声。
ひとり言のように呟いた彼は、少し乾燥した指先で私のいいところを撫でた。
「手荒れ、してる」
「美容師だからね。痛い?」
「……ううん、平気」
だからもっと、とは言わなかった。
言わなくてもきっと彼にはバレてる。私の本音。愛撫すらじれったい。早く奪って。あなたのモノにして。
いやらしい滲みをつくってしまっているショーツが、何よりの証拠だ。
「っあ、」
下着のうえから縦になぞられて。
「ん……っ」
サイドラインから侵入する彼の指。
一番敏感なところを覆っていた布が捲られて、愛蜜に濡れたそこが晒された。
花の湿潤は男を呑みこむには充分すぎるほど。とろり。彼に見られただけで奥から恥液が溢れだす。
「──……欲しい?」
彼が向けたのは悪戯な視線だった。
指先を私のショーツに引っかけた状態で、挿れて欲しいのなら乞うてみろと【おねだり】を求めてくる。
生意気な微笑。
なのに、艶っぽい。
「……ん、ほしい」
両手で口元を覆って、こくり。
小さく頷くと、彼はショーツを抜きとって、またひとつ。
その唇で微かに笑んでみせた。
「じゃあ愛してあげる、……だから」
妖しく揺れる月光。
黒い縁取りが、外されて。
「──……僕を愛して、絢香」