第18章 陽炎(R18:カレカノ理論III)
「絢香ちゃん! 見て、やどかり!」
「わ、すごいね、もぞもぞ動いてる」
「絢香ー、膝枕ー!」
「う、げ、また黒尾さんの絡み上戸がはじまった、……あ、いえ、やらさせていただきますスミマセン」
「ビーさん、つまみを作ってくれ」
「あの、だからですね、私の名前は瀬野絢香であって、……いえもうビーさんでいいです枝豆でいいですか」
これである。
絢香に近づけやしねえ。
俺の、絢香なのに。
俺が、カレシなのに。
「ちょ、お前ら絢香に近寄りすぎ!黒尾に至っては触りすぎ! マジで触んないで、つーか見ないで、絢香とおんなじ空気すら吸わないで!」
ちょっとくらいいいじゃん。
つーかうるせえよ木兎。
ビーさんつまみはまだか。
ダメだこいつら完全に酔ってる。
俺はドライバーだから飲みたくても飲めねえし、酔いたくても酔えねえってのに。
まったく、これだから野郎だらけの場所に絢香を連れてくるのはいやなんだ。
でも、まあ、今日は勘弁してやろう。
「光太郎も食べる? ほら、枝豆!」
手招きして俺を呼ぶ彼女。
絢香が楽しそうに笑ってる。
それだけで充分、幸せだ。