第18章 陽炎(R18:カレカノ理論III)
ふと、見上げる夜空。
手を伸ばせば届きそうな月。
風が運ぶのは潮とBBQの香りで、辺りを満たすのはさざ波と乾杯の音。
おもむろにミュージックアプリを起動する。青い電波に乗せられたR&Bが、ウーハーからゆるりとこぼれだす。
「お、京治の曲じゃん!」
「にろくん知ってるの?」
「あいつも毎年従業員だからな」
「いつ聞いても美しい声だ」
大好きな海と仲間と音楽と、それから、絢香。
たくさんの好きに囲まれた暑くて熱い夏。刻まれだす最高の思い出。さて、今年は彼女を乗せてどこを走ろうか。
光の季節が、始まった。
陽炎【了】