第18章 陽炎(R18:カレカノ理論III)
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心臓が爆発したのかと思った。
そのくらい、びっくりした。
絢香は受身な子だと思ってたし、清楚で、おしとやかで。俺が仕事で相手にしてる女たちなんかとは違う、控えめな子だと思ってた。
もちろん、いい意味でだけど。
「……しても、いい?」
その絢香がだ。
俺のベルトに手をかけた状態で視線を投げかけてくる。ケバくないメイク。ネイルは夏色。サラサラの髪。
おかしい。
元々かわいかった絢香が、もっとかわいく見える。
「っはい、お願い、シマス」
ヘンテコな敬語で返事をすると、絢香はこくりと小さく頷いてバックルに指先を引っかけた。
おぼつかない手つき。
中々外れないベルト。
絢香の困ったような眉がどんどん八ノ字になっていって、ついには涙目になって俺を見つめてくる。
「……ごめんね、慣れて、なくて」
もにょもにょと呟くその唇。
恥ずかしそうに俯いた、前髪。
目にうつる全部がかわいくて、愛しくて、まだなんも弄られてないのにバカみたいに息が上がる。
心臓が痛え。
きゅううって、苦しい。
「……、やべえわ、俺」
「……え?」
「んや何でもない、ひとり言」
──……お前のこと好きすぎておかしくなりそう。