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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第18章 陽炎(R18:カレカノ理論III)



 *


 心臓が爆発したのかと思った。

 そのくらい、びっくりした。

 絢香は受身な子だと思ってたし、清楚で、おしとやかで。俺が仕事で相手にしてる女たちなんかとは違う、控えめな子だと思ってた。

 もちろん、いい意味でだけど。


「……しても、いい?」


 その絢香がだ。

 俺のベルトに手をかけた状態で視線を投げかけてくる。ケバくないメイク。ネイルは夏色。サラサラの髪。

 おかしい。
 元々かわいかった絢香が、もっとかわいく見える。


「っはい、お願い、シマス」


 ヘンテコな敬語で返事をすると、絢香はこくりと小さく頷いてバックルに指先を引っかけた。

 おぼつかない手つき。
 中々外れないベルト。

 絢香の困ったような眉がどんどん八ノ字になっていって、ついには涙目になって俺を見つめてくる。


「……ごめんね、慣れて、なくて」


 もにょもにょと呟くその唇。
 恥ずかしそうに俯いた、前髪。

 目にうつる全部がかわいくて、愛しくて、まだなんも弄られてないのにバカみたいに息が上がる。

 心臓が痛え。
 きゅううって、苦しい。


「……、やべえわ、俺」

「……え?」

「んや何でもない、ひとり言」


 ──……お前のこと好きすぎておかしくなりそう。

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