第18章 陽炎(R18:カレカノ理論III)
「で、この子は木兎くんのこれ?」
光太郎とハイファイブで挨拶を交わしてすぐ、にろくんとやらは私に視線を向けた。
唇の前で小指を立てて、いたずらっ子のような笑みを見せている。
浅黒く焼けた肌に、ちらほらと白斑。サラリと分けられた前髪はとても色素が薄い。過度な日焼けをしている証拠だ。
首にかけられたネックレスは錆に強いシルバーだし、たぶん現地人なのだろう。または、熱狂的なサーファーか。
「そだよ、俺のカノジョ」
「へー! すげえ清楚系じゃん」
「指一本触んなよマジで」
「げっ、何、木兎くんベタ惚れ?」
「そ、俺こいつの為なら死ねるから」
ビーチボールが転がるようなテンポで会話する光太郎とにろくん。
なんだかとんでもなく恥ずかしいことを言われてるけれど、嬉しいから黙って聞いておこう。
こいつの為なら死ねる。
だってさ、光太郎ってば。
思わず笑みが漏れて、にへらと顔がふにゃけてしまって、その直後。
「だからいつまでイチャこいてんだってんだよ! とっとと仕事しろお前ら!」
耳を劈いたのは怒声だった。
ペテン師改め非リア充、こと、黒尾さんがダンボール片手に怒っている。
そんな彼の、二歩後ろ。
スタンドライトに照らされたもうひとつの大きな人影。
あれが恐らく、牛島さんだ。