第18章 陽炎(R18:カレカノ理論III)
「いつまでイチャこいてんだコラ」
光太郎と見つめあうこと数秒。
彼の唇が「愛」からはじまる五文字を紡ぐよりも前に、黒尾さんの冷ややかな声が飛んできた。
一応私たちのことを待っていてくれたらしく、砂浜と道路とを隔てる石壁に腰かけて不機嫌そうにしている。
これはさては、あれだな。
黒尾さん非リア充だな。
「あ、そういえば居たんでしたね」
「すっかり忘れてたわ黒尾のこと」
「うわ、ウッザ、お前ら給料なし決定」
いやそれだけは勘弁!
いやもう決めたから。
マジでごめんて黒尾!
絶対許しませーん。
不毛な問答を繰りかえしながら、ふたりの背中が砂浜へと降りていく。光太郎はしっかりと私の手を握ったままだ。
降りたつ砂浜。湿りきった土。星砂のホワイトビーチなんていうのはこの辺では拝めない代物なので、ビーチは見渡す限りの焦茶色である。
ザザ──……
ザザ、……ン
寄せては返し、また寄せては返っていく波音が、耳を通りすぎていった。
「う、わー! 木兎くんじゃん!」
「うーす、にろくん久々ー!」
アウトドア用のスタンドライトが煌々と照った空間から、ひとつの人影が勢いよく飛びだしてくる。
あれが、にろくんか。
爽やかそうな少年だ。