• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第18章 陽炎(R18:カレカノ理論III)



「よし、そんじゃ行くか!」

「っへ? 行くってどこへ」

「じゃあな、すがーらくん!」

「は!? ちょ、光太郎、待」


 ぐいぐい強引すぎる腕。

 私の肩をしっかり抱いたまま車へと向かう光太郎を、皆が見てる。

 この人はいつだってそう。
 クラブだって、オフィス街だって。

 どこにいたって人々の視線を惹きつけて、どこだって自分の為のステージに変えてしまう。

 私はそんな光太郎が好きで、大好きで大好きでたまらないのだけれど、でもやっぱり心残りなのは──



「激辛とワインがああーー!」



 恋人に拉致られる午後八時。

 光太郎に背を押されて、逃げようとして、捕まって、黒尾さんの手によって後部座席に引きずりこまれる。

 苦笑して手を振る菅原くんが猛スピードで遠く、遠く、遠くなっていく。


「どこ行くの、何なの!?」

「海行くの! ショーナン!」

「夜なのに!?」

「夜だからこそダロ」

「はい!? や、むり、私行かな、いや嘘です、嘘ですし行きますから縛らないでください黒尾さん、黒尾さん? シートベルトの使い方間違、っあーーー!」


 私の暑くて熱すぎる夏は、こうして始まったのであった。否、強制的に始めさせられたのであった。

 まん丸の満月。
 南空低く、輝いて。

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp