• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第18章 陽炎(R18:カレカノ理論III)



 がるると牙を剥いている光太郎のほっぺたを摘まんで、私は渋面をつくった。


「こら! 光太郎!」


 ピシリと叱りつけて「誰かれ構わず威嚇しない!」と言葉を加える。これじゃまるで飼主だ。

 光太郎の激昂が落ちつくのを待って、開ききった瞳孔が小さくなるのを見届けて、それからようやく事情を説明する。


「あのね、彼は同僚」

「同僚? 仕事仲間?」

「そう、私のお友達」


 そこまでで私が台詞を切ると、今度は菅原くんが「瀬野さんにはいつもお世話になってます」と会釈した。ちなみに朗らかな笑顔のおまけ付き。

 さすがは営業部の花形社員である。


「なんだ、そっか!」


 光太郎は途端に表情をパッ、と咲かせて人懐こい声を出した。

 こいつは敵じゃない。
 噛みつく必要もない。

 彼の本能の部分がそう理解したのだろう。徐々に溶けていく双眸のゴールド。

 絢香の友達なら俺の友達だな!だなんて、あっけらかんと笑ってるけど、ただのジャイアニズムだよねそれ。

 お前のモノは俺のモノ!

 俺のモノも、俺のモノ!

 光太郎の声で脳内再生しても何の違和感もないから困る。これで音痴まで一緒だったらどうしよう。

 でも、まあ、ひとまずは一件落着だ。

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp