第18章 陽炎(R18:カレカノ理論III)
う、あちゃー、光太郎。
しかも黒尾さんまでいる。
二人して車から降りて待ち構えてるし、光太郎は翼を授けるエナジードリンク飲んでるし、黒尾さんは瓶タイプのレモネードウォッカ飲んでるし。
どうしてそんなにガラが悪いの光太郎。どうしてそんなに目付きが悪いの黒尾さん。
ていうか何でいるの二人共!?
「おー、気合い入ってるなあ、彼ら」
けろりと笑んでいる菅原くんに「そうだねえ」なんて愛想笑いを返して、ススと身を隠す。
いやな予感がするのだ。
むしろ、確信している。
ここで光太郎と黒尾さんに捕まったら、大変なことになる。世間一般に不良といわれる彼らへの偏見とか、嫌悪とか、そういうことではなくて。
もっとこう、大変な災いが──
「あーーー! 絢香見っけ!」
歓喜、叫喚、猛ダッシュ。
光太郎はその黄金で私をロックオンした瞬間、まさに翼を授かったがごとく狩猟を開始した。
狩りというより、ただの突進だけど。
「え、瀬野の知り合い?」
「っいや、あの、知り合いというか」
「俺の絢香ー! 会いたかった!」
「……あ、あれが例の彼氏か」
「……ごめん菅原くん先に謝っとく」
半分白目で菅原くんに謝罪して、次の瞬間には光太郎の腕に抱きつぶされて。
「むっ、お前誰? 絢香の何?」
ああほら、もう、光太郎のバカ。
彼はハジメとの一件があってからずっとこうなのだ。私の周囲にいる男性を見るとすぐ絡む。すぐ睨む。
現在の標的は菅原くんだ。