第17章 代償(R18:孤爪研磨)
口内に捩じこまれたのは紛れもなく、以前彼にあげた飴玉と同じそれだった。
続いて侵入してくる舌。
ねろりと歯列を割って、犯される。
抵抗しようといくら身じろぎしても、いくら彼を押し返そうとも、ビクともしない。敵わない。
彼は、少年。
それはそれは儚なげな。
しかし、男なのだ。
「──……っん、ぅ、……はっ」
苦しい、いやだ、こんなの。
脳裏を過ぎるのは黒尾くんのことばかり。扉一枚挟んだ向こうにいる彼にこんなところ、絶対に、見せたくない。
やめて。
無言の訴えをして顔を背けるが、背けたことで露出した首筋を舐られる。下肢に押し当てられる硬直。男のかたちに膨れた欲で、彼が私を貪ろうとする。
やめて!
今度は毅然として拒絶しようとしたのだけれど、彼を突き飛ばそうと伸ばした両腕を掴まれてしまった。
手首を捕らえられて、ギリリ。
信じられない握力で締めあげられる。
「っ痛……! ……っ!」
思わず大きい声をあげてしまいそうになって、既のところでその悲鳴を呑みこんだ。
薄暗がりに浮かぶ瞳孔。
針のように鋭いそれが、丸く、開く。
興奮状態にある獣のように。
「かわいそうなおれのともだち、……クロはね、怪我、してばっかりなんだ」
友人が心配だという顔。
「そのたびにおれ、病院に迎えに来てあげてた、でも、これからは、……連れてきてあげる」
心配で心配でたまらないという顔。
「ねえ、おねえさん」
不安そうで、健気で、献身的な。
「……おれって、いい子?」
演技(フリ)をしているだけ。