第17章 代償(R18:孤爪研磨)
ここから程近い高校に通っているらしい彼は、その腰を痛めるたびに病院(うち)に通っていた。
バレーボール選手と腰痛は切っても切れない関係だ。
それにしても、と私は思う。
「あのね、黒尾くんは身体酷使しすぎ、疲れ溜めすぎ。ここ胃腸のツボよ? その若さで胃腸壊してどうするの全く」
ついつい小言がこぼれた。
心配なのだ。
彼は頑張り屋さんだから。
良くも悪くも、頑張りすぎ。
現在進行形で行っているマッサージは理学療法の一環だが、黒尾くんの身体はいつ触ってもボロボロである。
聞くところによると主将を務めているらしく、多少身体に鞭打ってでも「頑張んなきゃなんねーんだよ」らしい。
彼は他者に弱みを見せないで我慢してしまいそうなタイプだ。
恐らくそう、いや、絶対。
だから余計に心配なのである。
「肉体疲労と精神疲労の過多」
「い、って、マジ痛い!」
「適正体重マイナス2キロ」
「あだだだ! 痛てえ!」
「もっと自分を大事になさい」
ひと通りのマッサージとツボ押しを終えて、最後に湿布を貼ってあげた。
診察台にぐったりと横たわる彼。
へなりと垂れた両腕は思わず目を見張るほど長く、指先が床に届いてしまいそうだ。
あの身長を瞬間的に爆発させたエネルギーで操るのだから、しょっちゅう痛めるのも納得である。