第16章 遊戯(R18:国見英)
「おいで、絢香、こっち」
おもむろに立ちあがった英くんの手には、ヴヴと音を立てて震えるローターが握られている。
彼が必死に隠そうとしたモノ。
その正体が、ようやく判明した。
「先輩がくれたんだ、これ」
ちょっと強めに腕を引かれて。
「花巻さんと、松川さんがね」
身体を起こすよう誘導される。
「……彼女と楽しめよってさ」
最後にそう囁いた英くんの声が、内耳に直接注がれた。聴覚が麻痺していく。
彼の声色は心底愉快そうに。
弾んでいるのに、冷淡で、私の背筋にぞわぞわと這いあがるような快感をもたらした。
彼を求めてヒクつくそこが、きゅう、と収縮して与えられるのであろう刺激を期待する。
ひどくいやらしい気分だった。
吐息が漏れて、こぼれて、止まらない。心臓の拍動が痛いくらいに強くなっていく。
「座って、ここ」
英くんに促されたとおりにベッドへと腰を下ろした。両脚はマットレスの淵から床に垂らしたままだ。
すると、彼は自らもまたベッドへと上がって、私を後ろから抱くようにして腰を落ちつける。
ぴたりと密着した身体。
英くんの両脚の間に挟まれて、私は、背面に彼の体温を感じていた。
「絢香、見て、あの鏡」
彼に顎をすくわれて。
視線の先には、姿見。
「映ってる、よく見えるよ」
──お前の顔も、身体も。
彼がそう言い放った瞬間。
これから為されんとしている行為が何なのかを確信して、全身の血液が泡立ったかのような錯覚に襲われた。