第16章 遊戯(R18:国見英)
私は、彼という人間が分からない。
分かっているつもりになっていただけ。私が理解していると思いこんでいた彼は、国見英という人間のほんの一部でしかなかったのだ。
彼に出会ったのは、約半年前。
いつも眠そうなひと。気怠そうなひと。無気力なひと。そう思ってた。
でも、ひとたびコートに出れば驚くほど軽やかに宙(そら)を舞うし、バレーボールを追いかける瞳は冷静なのにとてもとても熱くって。
静と動のひと。バレーが好きなひと。かっこいいひと。いつしかそう思うようになっていた。
「ぁ、ん……っ」
「声、我慢、ね」
じゃあ、いまは?
妖艶な笑みをたたえて、男の顔をして、淫欲に瞳を歪ませている。色香に満ちたひと。私を蹂躙するひと。こんな英くん、知らない。
未知と対峙する恐怖。
でも、身体が疼く。
新たな一面を知れた悦び、だろうか。最愛に蹂躙されたいという、女の本望だろうか。
彼に惹かれていく。
彼の虜になっていく。
「っあ、……ん」
「すごい濡れてる、ほら」
下着ごしにぐりと指圧されただけで分かる湿潤。
熱をあげた下肢はしとと濡れ、彼のためにと選んだレースショーツに恥ずかしい滲みをつくってしまっていた。
あなたがほしい。
あなたをちょうだい。
言葉にせずとも、秘所から溢れだす蜜が本音を吐露してしまっている。
ヴヴ……ッ
突如として響いたのは、無機質な。
機械じかけの【なにか】がそのモーターを回しはじめた、鈍い震動音だった。