第16章 遊戯(R18:国見英)
「そんなに教えてほしい?」
甘さのなかに孕んだ、危うさ。
少年らしさを携えた軽やかなテノールが男のそれに変わる。耳に滑りこんでくる艶声。
私を組み敷いて制圧した彼は、見紛うはずもなく男性の身体つきで、腕力で。
キス、され、ちゃう。
そう思ったときにはもう、英くんの唇に呼吸を奪われていた。
視界に垂れた、彼の前髪。
「……っん、ぅ」
何が起きているのか分からなかった。
口腔内に侵入した熱の正体が、疼いてしまう下腹部の本心が、分からない。怖い。きもちいい。やめて。やめないで。
めまぐるしく感情が入れかわる。
彼とはこれが初めてじゃない。
付きあって二ヶ月の記念日、私の部屋で。二人とも初経験だったからギクシャクしてたけど、それはそれは甘い時間を過ごした。
でも、いまは──
「じゃあ、……教えてあげるよ」
耳に低く滑りこんでくる声。
スカートに挟んでいたブラウスの裾が引っぱられて、直後、英くんの熱を帯びた指先に腹部をなぞられる。
逆らえない。
抗えない。
甘さを捨てた彼には危うさだけが残ったのだ。その微笑は天使のような、それでいて、悪魔のような。
格好の獲物を見つけた肉食獣とも、またちょっと違う。
英くんの笑みに宿ったそれは、面白そうなオモチャを見つけたときの幼子とおなじ。
純心と、無垢と、──残虐だ。