第16章 遊戯(R18:国見英)
「えと、……それ、なに?」
「何でもないし何でもない」
「英くん焦ってる、どうして?」
問いかける。
問いつめる。
冷静沈着を擬人化したような彼が、なぜそんなにも焦るのか。彼をそれほどまでに焦らせる物とは、一体何なのか。
単なる興味だった。
そして興味深々だった。
「ねえ見せて、なに、ねえ」
「やだ無理ぜったい見せない」
ぐいぐい間合いを詰めようとする私。
そんな私の頭頂部を押さえる英くん。
右手で私の脳天を、左手は背後に隠したまま。あまりにも頑なに拒み続けるものだから、私の探求心も増幅を続ける一方だ。
「見せてって!」
「やだっつの!」
「英くんのけち!」
「うっさいしつこい!」
英くんは手足がモデルなんですかというレベルで長いので、要するに私のリーチでは到底届かない。
頭を押さえつけられて両腕をばたばたと動かす私は、さながら往年の低身長芸人のようだ。池だか、メダカだか、可愛らしいおじいちゃんの芸人さん。
「……っいい加減にしろ、絢香!」
どれだけ拒まれてもめげない私に、彼はついに痺れを切らしたようだった。
頭頂部を押さえていたはずの手のひらが、ふとその力を失って。
刹那、背中に感じたのは衝撃。
床にゴチンと後頭部が当たる。
「──……英、くん?」
押し倒されたのだと自覚したとき。
ぶつかった視線はあまりに熱く、湿潤として、その熱さは思わず息を呑んでしまうくらい。
──どうして、そんな目をしてるの?
私に覆いかぶさる英くんの肌が、吐息が、熱くて熱くてたまらない。どくどく、どくどく。
鼓動がテンポを上げていく。