• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第16章 遊戯(R18:国見英)




「えと、……それ、なに?」

「何でもないし何でもない」

「英くん焦ってる、どうして?」



 問いかける。
 問いつめる。

 冷静沈着を擬人化したような彼が、なぜそんなにも焦るのか。彼をそれほどまでに焦らせる物とは、一体何なのか。

 単なる興味だった。
 そして興味深々だった。


「ねえ見せて、なに、ねえ」

「やだ無理ぜったい見せない」


 ぐいぐい間合いを詰めようとする私。
 そんな私の頭頂部を押さえる英くん。

 右手で私の脳天を、左手は背後に隠したまま。あまりにも頑なに拒み続けるものだから、私の探求心も増幅を続ける一方だ。


「見せてって!」
「やだっつの!」

「英くんのけち!」
「うっさいしつこい!」


 英くんは手足がモデルなんですかというレベルで長いので、要するに私のリーチでは到底届かない。

 頭を押さえつけられて両腕をばたばたと動かす私は、さながら往年の低身長芸人のようだ。池だか、メダカだか、可愛らしいおじいちゃんの芸人さん。



「……っいい加減にしろ、絢香!」



 どれだけ拒まれてもめげない私に、彼はついに痺れを切らしたようだった。

 頭頂部を押さえていたはずの手のひらが、ふとその力を失って。

 刹那、背中に感じたのは衝撃。
 床にゴチンと後頭部が当たる。


「──……英、くん?」


 押し倒されたのだと自覚したとき。
 ぶつかった視線はあまりに熱く、湿潤として、その熱さは思わず息を呑んでしまうくらい。

 ──どうして、そんな目をしてるの?

 私に覆いかぶさる英くんの肌が、吐息が、熱くて熱くてたまらない。どくどく、どくどく。

 鼓動がテンポを上げていく。

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp