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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第16章 遊戯(R18:国見英)



 *


 英くんの部屋は、春の朝霧とおなじ匂いがする。こんなこと言ったら、またドン引きされてしまうだろうか。

 大好きな彼の右隣。
 スマホの小さな画面におさめたメルティショコラを眺めて、私はによによと顔を綻ばせていた。


「にやにやしすぎ、喜びすぎ」

「だってうれしいんだもん」


 たかがアイスぐらいで。

 英くんはちょっと呆れたようにそう言う。ロータイプソファに腰かけてあぐらをかく彼。手元には月刊バレー雑誌。


「たかがじゃないよ、されどだよ」


 彼からもらった最高の記念日プレゼントを見つめて、私はまたひとつ、うっとりと目尻を垂れさせる。

 あ、そうだ。
 ふと思い出したのは先日の。


「じゃーん、英くん、これ見て」


 東京セッター特集と書かれたページ。

 白黒にゴールドラインが特徴的なユニフォームの学校が取りあげられている記事を黙読していた英くんは、私の声に反応して視線をあげた。

 彼に見せるのはとある写メ。

 先週の土曜日に行われた体育祭の、応援合戦中にこっそり激写した一枚だ。


「よく撮れてるでしょ?」

「……それ俺にも送って」

「じゃあこっちは?」

「あ、それはいらない」


 彼が欲しがってくれた一枚は、特攻服に身を包んだ黄連団長、岩泉先輩の写メだった。

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