第16章 遊戯(R18:国見英)
天使の羽みたいだね。
以前そう称したら割りと本気で「ばかなの?脳内花畑系?」とドン引かれたので口には出さない、否、出せないのだけれど。
「絢香」
英くんの声が私を呼んだ。
がたん
ごとん
電車はまだまだ揺れている。
私より30+αセンチメートルも高いところにある視線は、窓のそとの、猛スピードで流れいていく景色の、はるか向こうに浮かぶ山々のシルエットに向けられているようだった。
「ん、なあに?」
小さく返したクエスチョンマーク。
英くんは遠くを見つめたまま、つり革を吊るすための鉄棒につかまって、気怠そうに声帯を震わせる。
「アイス屋、寄ろう、駅前の」
残暑厳しい季節。
彼曰く、虚弱冷房車の六両目。
交わした約束はひんやりと。
英くんのお家に向かう私たちは、付きあって三ヶ月の記念日を迎えていた。
何の変哲もない平日。憂鬱なブルーマンデーの放課後。部活はおやすみ。
──そう、今日は月曜日なのだ。