第15章 禁忌(R18:岩泉一)
その色香に耐えられず、顔を背ける。
しかしその抵抗はすぐに正されてしまい、先生の骨張った手で正面を向くように固定されてしまった。
今度は瞼をぎゅうっと閉じてみるのだが、それももちろん彼には通用しない。
「瀬野」
自分は苗字でしか呼ばないくせに。
「目開けて」
ずるいよ、そんな甘えたような声。
「好きだ、瀬野」
──……え?
ひときわ甘やかな声が聞こえた。
聞こえたと思ったら、それは彼からの告白だった。ずっとずっと待ち望んでいた、好きの二文字だった。
「お前のことが、好きだ」
もう一度。
ゆっくりと、私に言い聞かせるようにして降らせてくれた言葉。触れそうで触れていなかった唇が、重なる。ひとつになる。
熱を交換するだけのキス。
なんとも愛おしげな口付けを落として離れていった彼は、まっすぐに私を見つめて、私からの返答を待っているようだった。
「……わた、しも、先生のことが、──……はじめのことが好っ」
最後の二文字が止まぬうちに制された【好き】という気持ち。もう充分待ったとばかりに余裕なく注がれるキス。
深く、甘い、痺れ。
背筋をぞわりとした快感が走った。
結ばれた喜びと、肌を寄せあえる悦びと。その両者が相まって理性を奪い、私たちを狂わせていく。
「……は、あ、……っ」
口付けを解くことなく私のブラウスに手をかけて、彼はひとつずつボタンを外していった。
第一ボタン。
第二ボタン。
煩わしい。
もどかしい。
「全部引きちぎってほしい」
「全部引きちぎりてえな、これ」
瞬間、目が合って、私たちはほとんど同時に笑みを吹きだした。