第15章 禁忌(R18:岩泉一)
放映がはじまったニュースは都知事がどうとか、TPPがどうとか、私にはちょっとよく分からないものばかりで。
真面目な顔して「安定しねえな、この国も」とか呟いている先生の横顔を見つめていた。
かっこいいな。
改めてそんなことを思いながら見つめていた。
「──……なあ、瀬野、」
私と、同じようなテンポで。
おずおずと呼ばれる名前。
心臓がきゅうと縮んで、息が苦しくなって、ニュースから視線をべりべりと剥がして、先生を見る。見つめる。
でも彼はこちらを見ようとしない。
そこから先の言葉も紡ごうとしない。
おもむろに口付けたミネラルウォーターをこくりと呑みくだして、男らしい喉仏を揺らすだけだ。
なにを、言うつもりなの。
なにを、するつもりなの。
期待と不安がぐしゃぐしゃになる。
心臓が壊れちゃいそうになる。
「岩泉先せ、……っ、……!」
呼ぼうとした名が、塞がれた。