第15章 禁忌(R18:岩泉一)
「──……あの、先生、」
バラエティ番組とニュースの間を埋めるためのCМ。今にも崩れそうな崖で手を取りあう男性たち。
暑苦しいことこの上ない。
そんな映像を眺めながら核心をつこうとして、でも、やっぱり何も言えなかった。
【女をあげる新ルージュ】
切りかわった画面に映し出されたのは女性向けコスメのCМだ。
純白のシーツの上で、美男美女が肌を寄せあっている。
「あれ、この男のひとって、たしか」
「……俺の幼馴染だ、残念なことに」
わざとらしく会話を逸らしたにも関わらず、それを気にすることなく先生は言葉を返してくれる。
その眉間にはなぜか皺が寄せられていた。これでもかと寄せられていた。
【君色のキスで、俺を惑わせて】
イケメン幼馴染さんのセリフが電波に乗った瞬間、先生は、世界の終わりを見たみたいな顔をしてみせる。
「……俺な、こいつがバレーくそ上手いとか嘘だろ、ってたまに本気で思うわ」
「でも上手いってことは認めてるんだ」
「非常に残念かつ釈然としねえけどな」
お互いに、テレビの液晶を見たまま。
ぽつりぽつりと交換していく言葉が、静かな夜に溶けていく。