第15章 禁忌(R18:岩泉一)
先生は、きっと。
きっとこう言うつもりなのだろう。瀬野、お前の気持ちを受けいれることはできない。
毅然として、言うのだ。
俺は教師でお前は生徒だから、と。
そのために、はっきりと断るために、わざわざ学外へ呼びだした。それが岩泉先生なりの誠意なのだろう。
まったく彼らしい、と思う。
硬派で、真面目で、男らしくて。
私が好きになった男性は、そういうひとだ。岩泉一という人間は、そういうひとなのだ。
「──でも、」と零れるのは本音。
硬派でも真面目でも男らしくなくてもいいから、私と、恋をしてほしかった。
教師とか、生徒とか、社会的に定められた肩書きなんて全部捨てて、彼に愛されてみたかった。
たった八歳。
たった八年。
なのに、あまりにも遠い──
「お、かーわいい子発見」
決して埋まることのない八年を憂いていた。どうして彼は教師なのか。どうして私は生徒なのか。憂いても仕方のないことを、延々と憂いていた。
そんなときだ。
俯いていた視界に映りこんだ影。
男物のスニーカー、白、輸入品。
限定版ヴィンテージのそれを履いた【本体】は、どうやら私をナンパしようとしているらしい。