第15章 禁忌(R18:岩泉一)
両サイドを固めるのは日中にみた女子生徒たち。
体育祭中は明らかにスッピンだった彼女たちだが、その顔面はいまや別人と化している。夜の街に繰りだす準備はバッチリといったところか。
「何だお前らそのケバい化粧は」
「はー? ケバくないし」
「ナチュラルメイクだし」
「どこがだ、蛾の触覚よりもバッサバサしたまつげしやがって。打ちあげで羽目外す気満々ですって顔だろうが」
「が!? 蛾!?」
「岩泉マジ最低!」
そんなんだからモテないんだよ!
絢香、こんなゴリラほっといて行こ!
とか、なんとか。
余計なお世話でしかねえ捨て台詞を吐いて、女子生徒たちは去っていく。憤慨して校門へと向かう二人分の背中。
その後を追うようにして「また月曜日ね」と走りだす彼女を、瀬野の腕を、──俺は鷲掴みにした。
途切れた生徒の波。
辺りには静寂。
薄暗い昇降口。
引き止める彼女の腕。
揺れる、黒髪。
後方に倒れそうになった瀬野を受けとめて、その耳元に声を近付けて、俺は。
「今夜8時、駅前で待ってろ」
──俺は、禁忌を犯した。