第15章 禁忌(R18:岩泉一)
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先生さよならー!
また月曜ねー!
あれほど高く昇っていたはずの太陽が、西空の彼方へと落ちていく頃。
それぞれの悲喜交々を胸に帰宅する生徒たちを、俺は昇降口で見送っていた。
優勝した五組黄連の教え子たちはそれこそ喜びを爆発させていて、今日は「オールで打ちあげ!」などと騒いで担任に怒られていた。俺にも怒られていた。
生徒のみによる打ちあげ行為は校則違反である。
しかし、そんなことをいくら校則で定めても、それを破ってドンチャン騒ぎするのが若者というもので。
多分に漏れず俺もそうだった。
印象に残るのはやはり春高予選後だ。
あの、屈辱の日。
今でもオレンジと黒の配色を見ると心がざわついてしまうほど悔しい想いをした、あの日。
三年皆でラーメン食って、体育館でアホみたいにバレーして、そんで及川と二人で帰ったはいいけど、やっぱりどうにもこうにも気持ちが収まらなくて。
そしたらそれは【あいつら】も皆同じだったみたいで、親に頭下げてもっかい集合して、朝までカラオケで大騒ぎしたんだっけか。
全員もれなく目腫れてたな。
すげえ懐かしい。
あれからもう、八年か──
「岩泉センセ」
帰路につく生徒たちを見送りながら、青春の残像にノスタルジーを覚えていたときだった。
意識を撃ち抜いた高音。
肩が、びくりと跳ねる。
聞き覚えのあるそれに振り向けばやはりそこには瀬野がいて、制服姿で俺に手を振っていた。