第15章 禁忌(R18:岩泉一)
そうか。
俺は悲しそうなのか。
ちくちくと胸を刺す、痛みのせいで。
じくじくと胸を蝕む、嫉妬のせいで。
「──……好きって、……悲しいのか」
これまたぼんやりと独りごちた言葉に、金田一は俺以上の「???」を浮かべていた。
やっぱり岩泉さんおかしいスよ!
俺ちょっと体温計取ってきます!
俺が熱でも出してるんじゃないかと懸念して、見慣れたラッキョ頭が走り去っていく。いや、熱に浮かされているのは、本当なんだけれども。
『……っ先生の、……ばか』
瀬野が泣いてた意味。
その涙の理由(ワケ)。
俺にも、やっと分かった。
『本当は今すぐにでも抱いてほしい』
「本当は今すぐにでも抱き寄せたい」
『今すぐにでもあなたの腕に』
「今すぐにでも俺のこの腕に」
『抱かれて、キスをして、囁きたいの』
「お前が好きだ、俺だけを見てくれ」
『でも、先生は教師だから』
「でも、お前は生徒だから」
『だから言わない』
「だから言えない」
『こんなに近くにいるのに』
「すごく、遠くに感じる」
──……だから、悲しいんだ。