第15章 禁忌(R18:岩泉一)
胸を満たすのは独占欲だ。
汚い感情。
醜い我欲。
俺が、俺だけが、その笑顔を独占したくて。
その柔らかそうな肌も、グロスに濡れた唇も、いつも綺麗に櫛が通されている髪も、華奢な腰付きも、何もかも。
瀬野の全部を、俺のモノにしたくて。
眼前に広がった光景はまだまだ止むことなく、先程まで血のような赤だった校庭は白一色に塗りつぶされている。
視界は怖いくらいに白。
なのに、俺の胸中は──
「岩泉先せ、……岩泉さん?」
俺はさぞ酷い顔をしているのだろう。
嫉妬に狂った顔をしているのだろう。
金田一は訝った様子でこちらを覗きこんで、直後、どういう訳かその眉をハノ字に変えた。焦ったような困り顔。
「どうしました? 何かありました?」
彼は何を、そんなに。
まるで一大事だとでも言うかのように、あたふたと慌てふためいて俺を見つめている。そんな金田一に視線を返して「?」を浮かべると、帰ってきたのは予想外なひと言だった。
「すごく悲しそうな顔してますよ」
今日の岩泉さん、ちょっと変です。
やっぱり体調悪いんじゃないですか?
そう言葉を足した金田一のことを、ぼんやりと瞳に映す。