第15章 禁忌(R18:岩泉一)
「傷つけたくないなら抱いちゃえばいいじゃん。どんなに優しく振ったって、どのみちその子は傷つくよ」
「……そう、なのか?」
「好きな人に振られて傷つかない子なんていないもん。ていうか、岩ちゃんはそれすら分かってて、だからこそどう拒絶すればいいのか分かんないんでしょ?」
「……っ、………、」
「傷つけたくないから完全には拒絶できなくて、でも、自分は教師だから受けいれるワケにもいかなくて」
そこで及川は再度言葉を切った。
しかし、今度は微動だにしない。
まんじりとも動かず、ただまっすぐに、その視線で岩泉のことを射抜くだけだった。
湿潤とした彼の唇が、ゆっくりと、最後の言葉を発するために動きだす。
「──……それってさ」
彼は、そう前置きをした。
「もう恋に落ちてるじゃん」
息が、止まる。
比喩でも何でもなくて、岩泉は実際にその息を止めていた。
今まで自然にしていた呼吸の仕方が分からない。顔が、身体が、目元が、全身を流れる血液が沸騰したように熱い。苦しい。
なにも返す言葉が見つからない。
恋? 俺が?
そんなことあるワケ──