第15章 禁忌(R18:岩泉一)
じこ、ぎまん?
すぐにはその意味が理解できない岩泉だったが、懸命に記憶の海を浚うと、暫くしてようやく昔授業で習ったことを思い出した。
【自己欺瞞】
自分で自分の心を、あざむくこと。
自分で自分の心に、嘘をつくこと。
岩泉は首をひねって考える。
及川は、一体何が言いたいのか。俺が、どんな嘘をついているというのか。
分からない。
分からないし、でもそれ以上に、分かりたくないと思うのは何故なのだろう。
心臓が痛い。
鼓動が、どくどく、その速度を急上昇させて血液を送りだしていく。
「冗談か本気か分からない?」
分からないフリしてるだけでしょ?
及川は言った。
「明らかに冗談通じなさそうな岩ちゃん相手に抱いて、だなんて、本気じゃなきゃ言わないし、言えないよ。そんなの岩ちゃんだってとっくに自覚してるよね。だから、こうやって悩んでる」
そうでしょ?
閉口したままの岩泉。
その瞳に浮かぶ戸惑いに釘を刺すようにして、及川はさらに言葉を繋いだ。