第15章 禁忌(R18:岩泉一)
「どーーして!? なんで俺を誘ってくんなかったのさ!?」
閑話休題。
お話の舞台は再び【小汚ねえ呑屋】である。
女子が飲むようなお酒──カルーアミルクを注文したが店主に「んなもんねえよ!」と怒られた及川は、芋焼酎を片手にやいのやいのと文句を垂れていた。
アルコール度数25のそれ。
かつて日向翔陽に「大王様」と称されたことのある及川だが、その異名によく似た名前の芋焼酎である。
「お前普段東京にいんだろうが」
「それでも連絡のひとつくらい!」
「うるせえ、面倒臭え、あとうるせえ」
「ひどい! 冷たい!」
いくつになっても変わらない二人。
岩泉は泡の消えた生ビールに口をつけて、久々の再会に心がむずがゆくなるのを感じていた。
ノスタルジー、だろうか。
まるで学生時代に戻ったかのような感覚に陥って、彼はふと思い出す。
あれはたしか、8年前。
当時ツンとした美人系の彼女がいたにも関わらず、歳の離れた人妻に恋をしてしまった【18歳の及川徹】のお話だ。
夜中だというのに岩泉家に襲来した及川は、朝がくるまでグズグズと泣いていた。
俗にいう恋バナというやつを一方的に話し続けて、泣きつかれて眠るまで、ずっと泣いていた。
なんやかや悪態をついても及川を大切に想っている岩泉は、眠い目を擦りつつも彼を慰め続けたのである。