第15章 禁忌(R18:岩泉一)
「だって先生に抱かれたいんだもん」
これである。
岩泉は頭痛すら覚えて嘆息した。
第三学年を担当する彼にとって、三年二組に所属する彼女、瀬野絢香はかわいい教え子だ。
その容姿が大人びていることは岩泉も認めるところではあるが、彼女はまだ高校生。それも自分が勤める学校の生徒だ。それが事実。
たとえ岩泉に【その気】があったとしても、その事実は揺るがないのである。
だからこそ、岩泉は困っていた。
「あほかボゲ! 冗談でも言っていいことと悪いことがあんだろうが!」
彼は思う。
俺だって男なのだ。女に抱いてくれと誘われたら下半身が疼くし、下着まで見せつけられたら理性が飛びそうになってしまう。
それが教え子であったとしても、だ。
しかし一線は越えられない。
絶対に、越えてはならない。
元来くそが付くほど真面目である岩泉は、社会的に定められたルールから逸脱することを決して良しとはしなかった。
恋が、そして愛が、いとも容易く男女を狂わせるということも知らずに、彼は絢香の誘いを突っぱねる。
「冗談じゃないもん!」
絢香は言った。
私は生徒である前に女なのだと。先生にひとりの女として見てほしい。だから恥ずかしさを押しのけてまでセックスアピールをしている。
そう語る彼女の瞳は、真剣そのものであった。