第15章 禁忌(R18:岩泉一)
【scene1:言えないよ】
「ねえセンセ、このブラ可愛くない?」
青葉城西高校。
体育科準備室。
青春の記憶がこれでもかと刻まれた学舎の片隅で、岩泉一はその頬を赤に染めていた。
彼は今年で26歳。
この城を巣立ってから、八年という歳月が経過したある日の一幕である。
地元の大学を卒業した岩泉は体育科教師として、また、男子排球部コーチとして再度母校に籍を置いていた。
「先生、顔、まっかだよ?」
「……っるせえ、赤くなってなんか、」
「ほら、また赤くなった、かーわい」
「っ、お前なあ!」
自身のスマホを持ったまま赤面している岩泉に、ひとりの女子生徒がイタズラな笑顔を向けた。
大人をからかうのもいい加減にしろ!
そう言葉を返している岩泉の手中で灯る液晶画面。
090から始まる携帯番号の上には、澤村大地という文字が表示されている。
数日後に練習試合があるのだ。
県内トップの強豪校。
あの、烏野高校と。
学生時代に兵刃を交えた敵。
そして今では教師兼コーチ仲間として交流のある澤村に、宣戦布告のひとつでもしてやろうと岩泉は電話帳を開いていたのだが──