第14章 衝動(R18:花巻貴大)
「ったくしゃーねーなあ」
照れくささを隠すために軽口を叩いて、俺は、自らのTシャツに手をかけた。
襟口に人差し指を引っかけて、そのまま一気に上方へと引っ張りあげる。
頭部と腕がそれぞれ解放されると、ひやり、クーラーで冷やされた空気に素肌が触れた。
よっこらせ、と心中で掛声。
上半身裸でベッドに腰かける。
ほの暗い部屋に浮かぶ彼女の顔を、その視線を、まっすぐに捕らえて俺は笑んだ。
軽く両腕を広げて呼ぶ。
「おいで、絢香」
──彼女の名前。
初めての「絢香」がよほど嬉しかったらしい。彼女はふにゃりと顔を綻ばせて、直後、俺めがけて勢いよくダイブした。
ドサッ!
反転する世界。
彼女の前髪が、額に当たる。
くすぐったい。
額も、心も。
くすぐったくて仕方ない。