• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第14章 衝動(R18:花巻貴大)



 五階建てのマンションの角部屋。

 間接照明とアロマディフューザーだけが灯る室内で、俺たちは改めて唇を重ねていた。


「っん、……ふ、ぁ」


 なんとも甘やかな声が響く。

 鼻腔をくすぐるのはシャンプーの香り。夏に大輪を咲かせる花の匂い。

 彼女からも。
 俺からも。

 同じ花の香りがする。

 たったそれだけのことが、尊い。
 尊くて、奇跡で、幸せだ。


「……貴、大」

「なに、瀬野」


 ベッドを背もたれ代わりにして交わす口付け。その合間。

 キスを離さずに彼女が俺を呼ぶから、俺も、呼応するようにして言葉を返した。


「……分かってるくせに、意地悪」


 彼女が拗ねてみせて言う。

 ちょっとむくれた綺麗な顔。キスに濡れた唇が、何かをねだりたそうに可愛らしく尖っている。

 いつも一番近くで見てたからかな。

 たくさんの言葉がなくたって、分かるよ、──お前の言いたいこと。

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp