第14章 衝動(R18:花巻貴大)
「ああ、そういやこの前さ、岩泉と久々に飲んだんだけど──……」
考えあぐねた末。
俺が下した結論は【岩泉一の滑らない話】を披露することだった。
しかし、それは志半ばで断念せざるを得なくなってしまう。
電話が、鳴ったのだ。
俺のではなくて、瀬野のスマホが、着信を訴えるバイヴレーションを鳴らしている。
凍りつく彼女の顔。
その表情を見ただけで着信の相手が誰なのかは一目瞭然だ。瀬野に付きまとうストーカー男。あの川嶋とかいうクソガキである。
「電話、俺が出たろうか?」
「……ううん、これ以上貴大に迷惑かけたくないし、無視するから大丈夫」
「バカ、強がんな、震えてるくせに」
言いながら握った瀬野の手。
小刻みに震えてる。
なんて、弱々しい。
俺はいつになく真剣な面持ちで彼女を見つめて、その視線を捕らえて放さなかった。
俺は、あの頃と何も変わってない。
高校を卒業して八年も経つのに相変わらず瀬野が好きで、好きで好きで、どうしようもなく好きだ。
だけど当時は、好きと言うことすら許されなくて。瀬野は及川の彼女で、及川は俺のチームメイトで。
二人とも友達だった。
二人とも大切だった。
何より、俺が臆病だった。
自分の気持ちを伝えたところで及川に敵うはずもないし、叶うはずのない想いを伝える勇気なんて少しも持ち合わせていなかった。
だから言えなかった。
だから言わなかった。
だけど──