第14章 衝動(R18:花巻貴大)
しかし、忘れてはならない。
川嶋という生徒の存在を。
その、嫉妬に狂った執念を。
(え、と、……なんかごめんね)
(お前が謝ることじゃないだろ)
(うーん……でも、やっぱごめん)
無事に定期公演会が終了した学内。
うちの社長によるスピーチと、各学科の講師陣による講評を終えた今、俺たちは撤収作業に追われていた。
各生徒もそれぞれ公演の後片付けをしているのだが、やはり、例の川嶋とやらはこちらを睨みつけている。
つーかいつまで睨んでんだ。
そろそろお兄さん怒るぞ。
と、まあ、半分本気の冗談はほどほどにして。俺は撤収作業の傍らで瀬野と言葉を交わしていた。
(あの子、ね、すごく熱心な生徒で)
(ダンスに? それともお前に?)
(……分かってるくせに弄らないで)
声を潜める瀬野に釣られて、俺も思わずヒソヒソ声になる。
肩を落として嘆息する彼女はひどく困憊していて、その目元はクマのせいで薄灰にくすんでしまっていた。
俺は、ふと、ある考えに至る。
「瀬野、お前もしかして川嶋(あいつ)にストーキングされてんの? いや、もしかしなくてもそうだべ?」
川嶋という生徒の、異常とも言うべき執念。俺はそれを身を以て体感していたのだ。
だから、この考えに行きついたのは極自然なことなのだと思う。
一秒
二秒
三秒
たっぷり数えたくらいの時間が過ぎて、こくり、頷いた瀬野を見た瞬間。
──俺は、あることを決意した。