第14章 衝動(R18:花巻貴大)
彼女は、瀬野は、俗にいう元同クラの女子だった。選択科目が同じだったから、二年のときからの付き合いである。
仲のいい女友達だった。
気のおけないクラスメイト。
部活がない日は一緒に遊んだりもしたし、時には恋バナなんかもしたりした。
瀬野は綺麗な子、だと思う。
あえて分類するのならツンとした美人系。でも性格はすごく素直だし、意外とおっちょこちょいで、そんなところがまた可愛らしくて。
すげえ、好きだった。
「出たな怪人!」
「成敗してやる!」
「食らえ!」
「必殺正義ソード!」
「ぎゃあーー!」
「やられたー!」
いつもと変わらぬ怪人。
いつもと変わらぬ台詞。
テレビに出ている俳優たちが録音した音声に合わせて、ひたすら身体だけを動かしていく。
怪人の攻撃を避けて、仲間と連携攻撃、それから必殺技を繰りだして、最後にここで決めポーズ。
身体に叩きこんだ動きだ。
ほとんど無意識でも勝手に手足が動くし、覆面マスクをしているので観客から俺自身の顔は見えない。
(あいつ、更に綺麗になったなー……)
俺は、ただただ考えていた。
タタさんにバレたらとても叱られるけど、ステージに上がってる間中、ずっと瀬野のことが頭から離れなかった。
だってチラチラ見えるのだ。
怪人の攻撃を避けるときも。
仲間と連携攻撃をするときも。
必殺技で敵を倒して決めポーズをしているときでさえ、教職員用の客席にいるあいつが視界に映りこんで──
その姿から、意識が離せなくて。