第14章 衝動(R18:花巻貴大)
「で、話戻すけど何したお前」
「だから何も……いや、ちょっと恋路の邪魔はしたかもしんないスけど」
「は?恋路? なんだそりゃ」
俺とタタさんの会話は続く。
昔好きだった女がこの学校でダンス講師をしているということ。その女が生徒に告られていたこと。しかも唇まで奪われていたこと。
更にはそんな彼女と今晩飲みにいく約束をしたことまで全部、俺はタタさんに白状した。
その間、件の男子生徒はずっと、こちらを見つめたままだった。
いや、そうじゃない。
見つめてるのではなくて、あれは睨んでるんだ。
寄せられた眉根。歪んだ口元。レッドレンジャーの覆面越しにだが、その怨念は火を見るよりも明らかである。
「はー、そらお花巻が悪いわ」
準備運動のスクワットをしながらピンクレンジャーが言って。
「ねー、俺もそう思いマス」
俺はストレッチをしながら答えた。
確かにさっきのは俺が悪い。
我ながら大人げなかったと思うし、もし自分が彼の立場だったら同じように怒っていただろう。
『貴大! わあ、久しぶりー!』
今まで自分とキスしてたはずの女が、突然現れた男にキラキラの笑顔を向けているのだ。
そりゃ誰だって腹が立つ。
だけど、まあ、俺としては作戦成功だ。いや作戦なんて何もなかったけど。
ともかく、川嶋くんとやらのイケメンフェイスに彼女が絆されて【キスの先】を許してしまう、という展開だけは阻止できたのだ。
充分な成果じゃないか。