• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第14章 衝動(R18:花巻貴大)





「……俺、先生のことが好きです」



 ふと、声が聞こえた。

 駐車場へつづく地下通路をのたくたと歩いていた俺は、その切迫した台詞に思わず足を止めた。

 今日俺たちが派遣された現場は、県内にある芸能専門学校の定期公演会だ。

 うちの社長がここの卒業生らしく、後輩たちへの激励も兼ねたゲストショーケースをすることになったのだけれど。



「……う、そ、……だろ」



 俺は、またも遭遇していた。

 してしまったのだ。
 非日常というやつに。

 毎日クタクタになるまで稽古して、毎日汗ダクダクになって怪人を倒して、毎日ベロベロになるまでタタさんと飲んだくれる。

 それが大人になった俺の日常。
 浮いた話ひとつない毎日だけど、それでも愛すべき俺の日常だった。

 その、はずだったんだけど。



「ごめんなさい……私、生徒とそういう関係になるつもりはないの」



 ここらじゃ珍しいくらいの豪華な学校に併設された地下駐車場。

 俺のお目当てであるシルバーのワンボックスカーからたった数メートルの距離で、一組の男女が痴情をもつれさせていた。

 別にそれは問題じゃない。

 男がここの生徒だとか。
 女がここの先生だとか。

 ショーのために外部から来てるだけの俺にとっては、そんなのどうでもいいことだ。

 では、なにが問題か。




「──……瀬野?」




 生徒に言い寄られてる女が、俺の、初恋の相手だという【非日常的事実】が問題なのである。

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp